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人間存在の仕組み

 

インド占星術では、スダルシャン・チャクラという技法があります。

 

それは、日常意識を表すアセンダントからだけでなく、内面の心の意識の月ラグナと社会的意識の太陽ラグナからも総合的にホロスコープを見ていく技法です。

 

また、スダルシャン・チャクラの3つには、身体・現象を表すアセンダント、少し深くにある心・マインド・アストラルを表す月、もっと深くにある魂・コーザルを表すのが太陽だと言う別の局面もあります。

 

 

例えば、その3つのラグナ(自分自身を表し1室となるもの)の中で、アセンダントと太陽は、調和的な配置(1-1関係や、5-9関係)にあるのに、月は相反する配置(6-8関係や、2-12関係)にある場合、日常意識のアセンダントと社会的意識の太陽ラグナは、ある一定の方向性を示しているけれども、それに対して、月ラグナの意識、内面の心の意識が違った方向性を示すことになります。

 

そうすると、現実は、アセンダントや太陽ラグナに従って動いていきますが、月が納得できないでいると言うことが見られたりします。

 

そうすると、一見、社会的に問題ない生活を送っていても、本人は内面の心が納得しないため、人生の手応えが感じられずにいて、それが深い悩みになると言うことも出てきます。

 

 

3つの主なラグナ、スダルシャン・チャクラだけでなく、結婚を見る時には、何を楽しいと思うかとか、恋愛の意識を表す金星ラグナも検討していきます。

また、水星、火星、木星、土星などの他の惑星も、それぞれの惑星の特徴を持った意識として、個人の中に存在しています。

 

 

それぞれの惑星が示す意識は、個人の中で、常に同時に存在していて、それがダシャーと言う時期の流れによって、どの惑星の意識が優勢になるかと言うのが違ってきますので、ダシャーが切り替わると、同じ個人でも、やりたいことが違ってきたり、好きな異性のタイプが違ってきたりするのです。

 

 

だから、人生の大きな切り替わり(マハー・ダシャーの切り替わり)の直前には、結婚しない方が良いよとお伝えすることもあります。

 

例えば、木星期に、木星から見て7室(パートナー・配偶者のハウス)に金星が在住している人で、金星タイプの人を好きになって、そろそろ結婚したいと希望している人がいても、1年後に土星期に切り替わることがわかっていて、土星から見ると良い状態の火星が7室に在住しているような人の場合は、結婚した後に、ダシャーが変わって、好きなタイプが金星タイプから火星タイプに変化してしまうと言うことが起こってくるのです。

 

 

人間は、自分はこんな人間だと、ある程度自己分析して理解していますが、インド占星術を学ぶと、自分と言うのは固定した存在ではなく、時期によって刻々と変化している存在だと言うことが当たり前になってきます。

 

そして自分の中に、普段自分が意識していない自分が隠れていることに気づいたりもします。

 

 

インド占星術に馴染んでいくと、自分の中で、今、このラグナが強くなっているなとか、だから、こういう風に感じるのかなとか、自己理解も深まりますし、ホロスコープを通して他人の姿を見ることで、自分と違うタイプで理解できない振る舞いをする人のことも、こういう風になっていたら、そうかもしれないなと思えるようになってきます。

 

 

一人の人間の中に、色々な自己が同時に存在しているのは、統合失調症の人だけでなくて、人間の基本的な性質だと言うことになります。

 

元々、統一された自己が、ただ一つあると言うことではないのです。そして、私が私だと思っている私以外に、自覚できなくても色々な私が隠れているのが人間なのです。

 

 

インド占星術を学ぶことのメリットは、自分の今生の運命・カルマが理解できるようになったり、自分の人生の流れを理解して過ごしていけるようになるだけではなくて、人間というものの存在のあり方に対する理解が深まることだと思います。

 

 

仏教の示す絶対の真理に、無常・苦・無我と言うものがありますが、このなかの無常と言うのが、そうだよねと自然に納得できるものになってきます。

 

たった一つの統一された私があるわけではないと自然に思えることによって、無我の理解も、少しはできるようになってきます。

 

真理に馴染んでいくためにも、良い学問だと思っていますし、そこにも魅力があるのがインド占星術だと思います。